あなたを表現できる「隙のある」ベーシックカラー
こんにちは、yeni ディレクターの九冨 里絵（くとみ りえ）です。
デザイン性を重視したランジェリー、補正下着などジャンルを問わず、多くのブラジャーやショーツは着用時の身体の美しさと締め付けなどの着心地のバランスが大変重視されます。
色や装飾という上物のデザインへのこだわりだけで下着をつくることはできません。生地やゴムの伸び率、ホックの数、カップのつくり、細部にまで計算が必要です。
下着を作り始めた時、難しく感じたのは心躍るデザインと機能性の両立でした。無理な締め付けを我慢することなく、デザインを妥協することなく、一番好きな自分でいることができる、心地良い下着を目指しました。
このコラムではブランドディレクターの目線で「ランジェリーという装飾品」であり「アンダーウエアという消耗品」でもあるyeniの下着づくりの哲学についてお話しできればと思います。
今回はDEBUT COLLECTIONのカラー展開についてです。
あなたのその日の表情やメイク、ジュエリー、洋服、靴、バッグが主役。
最初に選んだのは、自由にあなたを表現できるキャンバスになれる色。
下着を身につけたあとには、あなたをファッションで表現できる余白がなければならない。
定番を謳うなら、下着を身につけた状態で視覚がお腹がいっぱいになるような、そういう存在ではいけない。その日の洋服を決める前に、クローゼットを開けて無意識に手にとってしまうような存在でありたい。
yeniの下着を一番に身につけて、背筋を伸ばして、今日一日何を着て、どんな気分で過ごそうか、そういうことが考えられる余白のある色にしたかった。
だから、最初の３色はブラック、ベージュ、グレーを選びました。
ブランドの原点、一番凛とした気持ちになれるブラック。薄手、淡色のトップスに合わせられるベージュ。インパクトのあるカラーと合わせたい中間色のグレー。
クローゼットにこの３色があれば安心できるあなたのファッションのお守りカラーです。
ブランドの原点「ブラック」
10代～20代前半の私の頭の中にはいつも「なぜブラジャーは白やピンク、水色ばかりなんだろう？」「日本にはなぜ、コムデギャルソンのようなブランドがあるのに、それに似合う下着がないんだろう？」という疑問がありました。
シックなブラックの下着はきっとわたしたちを素敵にみせるだろうという確信があったのに、なぜかそういう商品は市場にありませんでした。
今は誰もが知っているアパレル企業でも売られているインナーウエアの定番のカラーになりましたね。
時代の変化を嬉しく思います。
ブラックはyeniで一番最初につくりたいカラーでした。
いつでも憧れの大人の色です。
赤みをおさえた肌に馴染みすぎないベージュ
肌馴染みのよいベージュカラーはインナーウエアの定番です。シャツやTシャツなど薄い素材とカラーのトップスの着用時、インナーを透けさせたくない時に選ぶ色。
ただ、なんとなくもっさりした印象になりがちな難しい色でもあります。
肌の色に近づけすぎると何も着ていないように見えてしまい不自然でもあります。
透けないけれど肌に影をつくって、ふとした瞬間に見えてもおしゃれなベージュ。
それがyeniのベージュです。
赤みをおさえて肌に馴染みすぎないよう工夫しました。
最高の引き立て役になれるyeniのグレー
22歳で革製品のデザイナーになって26歳で起業してやめるまで7シーズン毎回違うグレーの色出しをする仕事に関わりました。
グレーは革製品では定番の色。
ヨーロッパでは特に人気で、エルメスの「エトゥープ」や「グリ・エタン」などのグレージュが有名です。
その年の夏の香りを感じさせるサンダルのためのグレー、定番のローファーのためのグレー、フォーマルバッグのためのグレー、カジュアルな編み地のためのグレー、軽いカーフレザーのためのグレー、あたたかみを感じさせる真冬のバッグのためのグレー。
色にバリエーションがあるのはもちろんですが、それを用途や素材や持つ人の肌の色に合わせて選び出すことの奥深さを知った経験でした。
グレーは完全な中間色で、他の部分に注意を向けるためのサブカラーのような役割を果たします。他の色を引き立てる背景色としてほとんどの色とも合わせられます。
yeniのグレーは例えばビビットカラーのニットなど明るめのトップスと合わせた時にちらりと肩紐が覗いても素敵に見える色にしたいと考えていました。
グレーのインナーは白色や肌色とのコントラストの差が小さいので、ベージュ同様肌の境界がわかりにくく、透けにくい色です。
グレーは下着だけを着用した状態で寒々しい見え方にならないよう、ベージュとは逆に少し赤みを持たせて血色が感じられるような肌馴染みのいいあたたかみのある色にしました。
最初につくるのは「名脇役」がいい。
ブラック、ベージュ、グレー。
DEBUT COLLECTIONの３色は決して派手さのある色ではありません。
けれど、あなたのファッションの「名脇役」になって欲しいという思いを込めて、こだわり抜いて色出しをしたカラーです。
是非クローゼットにいれていただき、何を着ようかと悩んでしまう日につい手にとってしまう、あなたの定番にしていただけたら、これほど嬉しいことはありません。
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