こんにちは、yeni ディレクターの九冨 里絵(くとみ りえ)です。


デザイン性を重視したランジェリー、補正下着などジャンルを問わず、多くのブラジャーやショーツは着用時の身体の美しさと締め付けなどの着心地のバランスが大変重視されます。


色や装飾という上物のデザインへのこだわりだけで下着をつくることはできません。

生地やゴムの伸び率、ホックの数、カップのつくり、細部にまで計算が必要です。


下着を作り始めた時、難しく感じたのは心躍るデザインと機能性の両立でした。無理な締め付けを我慢することなく、デザインを妥協することなく、一番好きな自分でいることができる、心地良い下着を目指しました。

 

このコラムではブランドディレクターの目線で「ランジェリーという装飾品」であり「アンダーウエアという消耗品」でもあるyeniの下着づくりの哲学についてお話しできればと思います。


今回は「これからの新しい美の定義」についてお話ししたいと思います。


これからの新しい美の定義とは?


過去を振り返ると、肌が白く、スリムな体型の人が美しいというのが、日本におけるひとつのスタンダードでした。広告写真に登場するのは、画一化された容姿を持つモデルばかりで、そういった価値観の押しつけに疲れていた女性も多かったと思います。


しかし、昨今「美の価値観」はより多様化しています。


下着と関係が深いところでは、2010年代前半頃から支持されるようになった「ボディーポジティブ」というムーブメントがあります。このムーブメントはスリムな白人ばかりを起用するアパレル広告に対して、人種的マイノリティーの女性たちがInstagram上に「#BodyPositive」をつけて「自分を愛そう」と発信し抗議したことがきっかけで波及していきました。



アメリカを筆頭に世界各国で、下着の広告モデルはバストが大きくウエストが細い画一された体型から、多様な体型に移り変わっていきました。

 

「ひとりひとり誰もがあらゆる先入観から解放され自分らしい美しさを謳歌することができる世界をつくろう」


そういった考えがより広い世代や人種、性別に共感をもって受け入れられるようになりつつあります。


誰もが知らず知らずのうちに持ってしまっている”無意識の思い込み”=アンコンシャスバイアス

わたしたちの価値観は、日々様々なものから影響を受けて出来上がっています。


中には、気づかぬうちに受け取った情報や価値観であるにもかかわらず、あたかも真実であるかのように認識している考えもあります。


下着においては例えば「アンダーバストは細い方がいい」「バストは大きい(小さい)方がいい」「バストが垂れてはいけない」といった考え。


こういった価値観を一概に悪いということはできませんが、10代の張ったバストよりも年齢を重ねた40代以降のバストに美しさを感じる人もいますし、バストが大きくても小さくてもそれぞれのスタイルを活かして楽しく過ごしている人はたくさんいます。


誰もが知らず知らずのうちに持ってしまっている”無意識の思い込み”のことを「アンコンシャスバイアス」と言います。


自分自身に向けたアンコンシャスバイアス、美しさにまつわる無意識の思い込みは知らず知らずのうちに自分を傷つけているケースも多いです。


なぜなら美しさの価値観は正解もない上に、流動的で、自分の美意識が無意識に刷り込まれたものか、自分で意識的に選び取ったものなのかをジャッジすることも難しいからです。


昨今は物事を決めるときに「他人の目を気にせず、自分が心地いいと思ったものを選ぶべき」という判断軸を持つ人が増えているように思います。


バストの美しさの価値基準との向き合い方もどこか居心地の悪さや息苦しさを感じるようなものであれば、一旦離れて見つめ直してみる、という心がけが大切なのかもしれません。


自分らしい美しさはどうやって見つければいいのか?

下着の仕事をはじめて5年以上が経ち、女性の「美を自分自身のためのものと捉える意識の変化」を強く感じます。


自分自身がときめいているか、満たされているか、どきどきしているか。

バストメイクに限らず、ファッション、スキンケア、メイク、ヘアメイクなどどの分野も他人の目線よりも自分の居心地の良さを重視する傾向にあるように思います。


画一化から個別最適化への移行期で、まだ明確な答えや生き方を見つけられている人が少ないように思います。また、わたし自身も迷う日もあります。

ただ、美しさに年齢も性別も国籍も関係がないという価値観が世界的なスタンダードになりつつあることは素晴らしいことです。

自分以外の誰かになろうとすることではなく、自分自身を高めていくことが幸せにつながると当たり前に考えられる今は、幸せな時代なのかもしれません。

 

前回のコラム
3月8日は国際女性デー


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